ミステリアスよかろうもん

江東区の三ツ目通り沿いに、[よかろうもん]と言う
博多ラーメンの店がある。

ここは本格長浜ラーメンを提供する都内でも数少ない
貴重な店である。

その強烈なまでに濃厚な豚骨スープは一度食した者を
魅了し続け、その過激なまでの豚骨臭は周辺の住民の
苦情の種となっていることであろう。

限りなくワイルドなスープは豚骨嫌いには
苦痛となるに違いない。しかしそれゆえに一度
その味を「旨い」と感じてしまうと、迷路のように
二度と抜け出せないほどにハマってしまう。
それが博多長浜マジックなのだ。

さて、その驚異とも言うべき長浜マジックに染まってしまった
この僕が夜な夜な猛烈に長浜ラーメンを欲してやまない
と言うのは容易に想像できるだろう。それは時として発作となり
夜中に僕を襲う。そんな夜は突然やってくるものだ。
そう。昨晩のように。

夜中1時半を回ったころ、、、僕はメールを書きながら突然こう思った。
「博多ラーメンが食いたい!」
しかし夜中の1時半だ。明日は会社。今日は我慢するかな。
僕はそう自分に言い聞かせたのだった。

30分後、急ぎ足で車に乗り込み、猛発進する1人の男の姿を
目撃した者がきっといたに違いない。
全国のラーメン好きの内、一体何人くらいの人が不審者と
間違われて周囲の住民を恐怖におとしいれただろうか?
そんな疑問がかすかに頭をかすめた。

よかろうもん。博多弁で「良い物」と言う意味だ。
この店の外見は黄色と緑で覆われている。

緑の地に黄色い字で「よかろうもん」。
店内のカウンターは黄色。店員のシャツは緑。
何というセンスだろう。。。
さらに狭い店構えに小汚い内装。
僕が豚骨好きでなかったら、インターネットで
噂を聞いていなかったら、決して
こんな店に足を踏み入れることはなかっただろう。

強烈な豚骨スープとはうらはらに店主は気の弱そうな
オヤジ。と言うよりはオヤジになりかけた兄貴と言う感じだろうか?
とてもあの弱そうな店主があんなパンチの効いたラーメンを
作っているとは思えない。

そんなギャップがまた、この店のミステリアスな部分をかもしだして
いるのだろう。

しかし昨晩の出来事はさらに神秘的だった。

2時20分。閉店約10分前に店に着いた僕は
スライド式のガラス扉を開け店内へと入った、
その瞬間!

足もとに仰向けに中年男性が倒れているではないか!
さすがよかろうもん。そんじょそこらの店とは違うと言う訳か。
僕も一応常連の一員なのだ。このくらいで驚いてたまるか。
懸命に平静を装う僕に、気弱な店主が話しかけてきた。

「あ、こちらへどうぞ。」
カウンターは満席なのでテーブル席に
案内されたのだが、目の前には床に横たわる
オヤジの姿が。。。
なんとも落ち着かないシチュエーションだ。。。

「あ・・・あの、、、ラーメンばりかた(※1)で。。。」
注文をすませてはみたが、やはり目の前で倒れている
オヤジが気になる。

数分後、倒れてるオヤジが突然目を覚ますやいなや、
じっと僕の方を見つめだした。

い・・・いや、、そんなに見つめられても、、、

どうして良いのか分からず目をそらすと
外から救急車のサイレンの音が聞こえるではないか。
そうか、きっとこの音で目を覚ましたんだな。。。
そう思っていると、オヤジは立ち上がり
「トイレ、トイレ。。。」
と言いながらよろめいている。

気弱そうな店主は「トイレはこちらです!」
と言ってトイレのドアを開ける。
なんとそこは僕の座っていた席の真後ろ。
常連ともあろうこの僕がこの店のトイレを知らなかったとは。。。
何故こともあろうに僕の真後ろでトイレの扉が開かれなければならないのだ!
なんと言う屈辱!これからラーメンを食べようというのに
目の前にはよろめくオヤジ、後ろには扉全開のトイレ、
この仕打ちはひどい。

などと思っている間に先ほどの救急車の音が激しくなってきた!
そして、ガラス扉越しに救急車が見えたと思うと、
店の目の前に停車し、5名ほどの救急隊員が急ぎ足で出てきたのだ。

そしてその内の一人の隊員がよかろうもんのドアをあけて
店内に入ってきた!

「どちらですか!?」

救急隊員が僕に訪ねてきた。

「は???」

と言いながらも状況は大体把握できたので、

「ああ、この人です。」

と、今まさにトイレに入ろうとしているオヤジを
指さした。救急隊員はオヤジをトイレの扉から引き剥がし、

「救急車に乗ってください!」

と言って尿意をこらえるオヤジを連れ去ろうとしている。

するともう1名の救急隊員が入ってきて、

「お酒は飲んでないんですか?」

と店主に尋ねる。
・・・。どう見ても飲んでるだろ、あほか、こいつ。。。

しかし気の弱そうな店主は丁重に答えていた。

「いや、うちでは飲んでないんですけど、店にはいってきたら
突然倒れて1分間くらいけいれんしてたんですよ。」

なんと言うはた迷惑な話だ。
けいれんするために店に入ってきたと言うのか。
いやがらせに近いではないか。

あっけなく、オヤジは救急車に連れ込まれてしまった。

数秒後、救急隊員が店に舞い戻ってきた。
そして、

「あの、肌色のウェストポーチがあるって言ってるんですけど、
どこですか?」

と僕に聞いてきた。。。。
だから、オレに聞かれてもさぁ、、、
そりゃたしかに向かい側の席に座ってるけど
知り合いじゃないんだってばよ。。。

結局肌色のウェストポーチは見つからず
救急隊員はそのまま店を出ていった。
だいたい肌色ってなんだよ。。。自分の
腹じゃないのか???

そんな出来事があったにも関わらず、店内の
客は何事もなかったかのようにラーメンをすすっていた。
もちろん僕もその一人だった。

よかろうもん。ここではそんな事件も日常茶飯事なのか?
店を出る時に3人のチンピラ風のガキんちょが
入店しようとしたところ、

「あ、もう終わり!」

と、気弱そうな店主が断っていた。

「んだよ!準備中って書いてあんじゃんかよ!」

ガキんちょは文句たれながらも立ち去っていった。
夜中の2時半に準備中のかんばんが出ていたら普通は
閉店ってことだよな。。。

それにしてもこの店でラーメンを食べたあとの達成感は
いつも充実感を与えてくれる。

ありがとうよかろうもん。これからも強烈なラーメンを
食べさせてください。

※1ばりかた:博多ラーメンでは麺の硬さを好みに調節してくれる。
普通、かためん、ばりかた、ハリガネ、粉おとし
の順に硬くなっていくのだ。ちなみに粉おとしだと本当にちょこっと
お湯につける程度。ほとんど生。

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※この記事は旧「P-38」diaryから移植しました。
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キヲクドロボウ予告-トリウッド版

▲撮影(Bカメ)とVFXを担当しました

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▲オープニングムービーのCGを担当しました

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▲ちょびっとだけCG合成を担当

▲ちょびっとだけCG合成とタイトルを担当

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▲僕の弟くんの2nd.アルバム。お気に入り。

▲僕の弟くんのアルバム。かちょいいー。

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